粘着テープを活用したスキポール空港のガラス壁

スキポール空港のガラス壁を粘着テープで接着

オランダ・スキポール空港の内装には滝のような美しいガラス壁があります。アムステルダム国立美術館の改装工事で不要となったガラス片をテサの粘着テープで接着してつくられました。

2017/09/21

美術館のガラスを美しい装飾へ

オランダ・アムステルダムにあるスキポール空港のメイン通り(Holland Boulevard)にユニークなデザインのガラス壁が設置されています。この装飾には、アムステルダム国立美術館の改装工事から回収されたガラスパネル10,000枚が使われています。通常なら廃棄されてしまうガラスを空港の装飾として活用(再利用)するという画期的なアイデアでした。このガラス壁を製造するにあたり、通常はガラスパーテーションの突き合わせ部分に使用される tesa® ACXplus(アクリルフォーム基材両面粘着テープ)が採用されました。短冊形にカットしたガラスを何層にも積み重ね、1枚1枚を粘着テープで貼り合わせています。ガラス断面を大きな壁面の一部として使用することで、角度によって見え方の異なる美しい輝きを演出します。

貼り合わせたガラスの端面(断面)を並べたこのデザインは、スキポール空港の印象的なアイキャッチとして今も現地の人々から愛されています。私たち粘着テープのメーカーにとっても新しい用途でしたが、建材としての可能性を世界に示すよい実例となりました。次世代を担う若いインテリアデザイナーによる斬新な発想と、新しいテクノロジーが一体となったことで 2,200平米もの巨大なガラス建造物をつくる このプロジェクトが実現しました。Glasolutions社による卓越したガラス加工技術とHermans Groep社による精密な施工技術がなければ、実現は困難をだったでしょう。

More than 10,000 glass elements were joined together to create a semi-transparent, curved facade.
ガラスの断面をあえて表面として使用するユニークなデザインです。

© Seneca Media/Rogér van Domburg

tesa® ACXplus両面粘着テープでガラス同士を貼り合わせます。
tesa® ACXplus両面粘着テープでガラス同士を貼り合わせます。

© Seneca Media/Rogér van Domburg

ガラスパネルの貼り合わせ

はじめに、Glasolutions社とテサグループが協力しガラス片を貼り合わせてガラスブロックをつくる工程を確立させました。ガラスパネルを貼り合わせる特殊なアッセンブリ専用ラインを制作し、パネル1枚(縦:3,200 × 横:70 × 奥行:10 mm)を10,000枚貼り合わせる工程を半自動化することができました。

パネル1枚に対しtesa® ACXplus両面粘着テープ(縦:3,200 × 幅:0.6 mm)を2本貼りつけます。この工程では貼り合わせ位置の調整と粘着テープをしっかり接着するための適切なラミネーション圧力の調整が重要でした。次に、粘着テープのはく離フィルム(ライナー)をはがし、7枚のガラスパネルを一気に接着させます。この工程を繰り返し、合計で2,200平米のパネルを接着して1,500個のガラスブロックが完成しました。

ガラス壁の施工

重いガラスブロックを美しく配置するためには、熟練の職人による精密な施工が必要でした。ガラス専門の施工会社であるHermans Groep社によって高さ3.37mのガラス壁へと組み立てていきます。あらかじめtesa® ACXplusを貼りこんだフロア・天井用フレーム(Glassolutions社の製品)にガラス壁を接着します。使用する粘着テープの厚みを1~3mmと変化させることで、U字部分(半径 50~145 cm)の滑らかな曲線を再現することができました。また、曲面部分や多く光を反射させたい部分にはステンレススチールのリアウォール(Glassolutions社の製品)を取りつけました。

実際に空港へ施工するにあたり、建築家やクライアントからは強度の高さが求められました。Glassolutions社では事前に様々な施工技術を検査し、その結果tesa® ACXplus両面粘着テープが透明でかつしっかり接着でき、予算に見合う理想的なソリューションであることが結論づけられました。

このプロジェクトで責任者を務めたMartin Weerheim氏は、当時を振り返りこう語っています。「tesa® ACXplusは他社の粘着テープと比べて柔らかく、フレキシブルでした。気泡が入りにくかったことも決め手となりました。」この粘着テープがもつ大きな可能性を感じたWeerheim氏はこう続けます。「この粘着テープと出会ったおかげで、ガラスパネルの継ぎ目を見せずに接着し、美しいガラス壁を仕上げることができました。ガラスパネルの貼り合わせに使用する粘着テープの厚みを少しずつ変化させることでカーブ部分の施工も実現することができました。従来のガラスを曲げる加工では不可能なデザインを実現できたのには驚きました。」

理想的なソリューション

接着したガラス壁を長く高い品質で保つため、テサグループではGlassolutions社に対して技術サポートを行っていました。このプロジェクトの責任者だった tesa B.V.(オランダ現地法人)のEric Deibelは当時をこう振り返ります。「粘着テープは建材としての強度が足りないというイメージが先行し、当初は苦労しました。実際、接着する材質や表面の状態、貼り合わせ時の圧力などの条件によって結果が異なることがあるからです。今回のような内装向けのガラス壁という用途においては、tesa® ACXplusがベストな選択肢だったと思います。硬いガラス面にしっかりとつくことはもちろん、粘着テープ自体が柔らかいため施工時に生じる摩擦や衝撃を吸収する役割を果たすことができたからです。」

スキポール空港からは、安全性の高さとメンテナンス性の良さに関するご要望がありましたが、様々な製品で実施した試験結果からもtesa® ACXplusが最適だという結論になりました。思わぬ問題が発生しないよう、様々な種類の試験を実施したとWeerheim氏は語ります。さらに、万が一破損してしまっても尖った破片が出ないこと、ガラスパネルはのちに交換できることを試験で確認したと話します。このプロジェクトで実施した試験で耐火性が認められ、日々の清掃で使用される洗浄剤に対する耐性も確認されました。特に優れていた点は、汚れなどによる変色に強いことです。コーヒーがかかった場合や、湿度が上がった場合、ホコリや泥がついてしまった場合などです。tesa® ACXplusの側面部分にはファインガラスパウダー(ポリッシュ)が塗工されているため、このような汚れがつきにくく試験でよい結果が得られました。