トレンド

建築現場で存在感を増す粘着テープ

住宅やビルなどの建築技術は日々進化を遂げています。ネジやビス、液体接着剤を用いた接合・接着が一般的です。しかし、接着(粘着)技術の進歩により、高機能な粘着テープが採用されることがあります。工具を使わない工法へと変化しているトレンドが要因のひとつと考えられます。地下から天井まで、施工現場で粘着テープの存在感が増してきています。

私たちテサは、火災が発生した場合でも燃え広がりにくい難燃性PEフォーム基材の両面粘着テープを開発しました。くらしに身近な粘着テープですが、初めて市販された布テープは115年前の「Lassoband(ラッソバンド)」という商品と言われています。

工業用粘着テープ生誕125周年

進化する施工現場

この数十年間で建築資材のマテリアル(素材)が変化し、これにあわせて施工技術も変化しています。さらに現在は「サステナビリティ」への取り組みが注目を集め、これまでの常識が見直されるトレンドが起きています。部材の永久固定(接着)がネジやビスを使った機械接合が中心で、接着剤を使う場合は養生時間を長くとることが当たり前でした。しかし、粘着テープを使う工法へと考え方が変化してきています。意匠性の高さ素材表面を傷つけないという点や、養生時間の短縮を実現できる点が高く評価されています。

このような市場の変化を受け、建築分野を専任する粘着剤研究員やエンジニア、用途開発などが一丸となって製品開発を進めています。建物の設計やデザインの自由度を損なうことなく、確実かつシンプルなプロセスで接着を実現することが私たちのミッションです。

粘着テープで永久接着を実現

私たちテサは粘着テープのプロとして、企業が抱える接着の課題解決に取り組んでいます。例えば、素材の種類が異なる場合の接着を実現するtesa® ACXplusシリーズは汎用的にご使用いただけます。アルミニウムとガラスなど、温度変化による膨張係数が異なる場合、素材にかかる圧力を適切に分散することができます。特殊な構造をもつハイテク素材を傷つけずに接着する用途としての活躍も期待されています。粘着剤に厚みがあるため振動を抑えたり、重い部材を支える役目を担うこともあります。

建築分野では液体接着剤が広く使われていますが、粘着テープは均一に塗布する技術が不要養生する時間を短縮できるため、施工の標準化や時短という点でも大きなアドバンテージを見込めます。

塗工技術の追求

部品の接着や養生以外の場面では、密封(封止)する用途で粘着テープが活躍しています。私たちテサは建築分野のラインナップ拡充のため、アメリカのマサチューセッツ州ニューベリーポートに拠点をおくFunctional Coatings(ファンクショナル・コーティングス、以下FCs社)を買収し、2018年に完全子会社化しました。FCs社は、一般住宅の外壁内部に使用されている透湿防水シートに粘着剤を塗工する技術に特化した企業です。シートがもつ透湿性の機能を損なわないように粘着剤を塗工することができます。

住宅の外壁を施工する際、通常はタッカーを使って透湿防水シート(粘着性のないフィルム)を貼りつけます。あらかじめ粘着剤が塗布されたシートを使うことでタッカーが不要になり、シート表面や壁面を傷つけずに施工できます。また、タッカー穴がなくなることで防水性能が高まる効果も期待できます。

FCs社はサステナビリティに配慮した加工工程を確立しています。有機溶剤を使用せずブチルハイブリット粘着剤を塗工する溶剤フリーの技術です。ビチューメンソリューション(瀝青)などを使用しないため、有害なVOC(揮発性有機化合物)が発生しません。

お客様の目的に応じて粘着剤の塗工パターンを調整できるため、オールラウンダー的な役割も果たします。粘着剤の厚みを変化させたり、透湿性のあり・なしを変化させることができます。そのため、建築分野で求められる密封性や防水性に適した製品のカスタマイズを実現できます。地下や基礎工事の防水施工や、窓やドアで使われる止水テープにもこの技術が使われています。

難燃性への挑戦

建築分野では、減災を目的とした対策も重要です。テサでは火災の広がりを防止する難燃性に着目し、難燃性の両面粘着テープtesa® flameXtinct(テサ・フレイムエクスティンクト)シリーズを開発しました。なかでも、tesa® 45001は難燃性をもつPEフォームを基材に採用した両面粘着テープです。

オフィスビルなど、建物の全体を垂直につなぐエレベーターは空気が上下に流れる空間をつくります。火災が発生したとき、この空間が煙突のような働きをして燃焼が促進してしまいます(煙突効果といいます)。そのため、エレベーターのシャフト内や各階の扉に延焼を抑える素材を採用するなどの防火対策が求められます。tesa® flameXtinctはこのニーズにこたえるため、難燃性の厳しい基準をクリアした製品です。今後もこの分野の研究を進め、よりよい製品開発を目指します。

布テープのはじまり

生活に身近な粘着テープですが、これまで多くの進化を遂げてきました。当時テサブランドを展開していたBeiersdorf AG(バイヤスドルフ)は、115年前の時点でこの需要の高まりを予見していたそうです。現在はテサやニベアなどのスキンケアブランドを傘下にもつ親会社へと成長しました。

1906年頃、バイヤスドルフがLassoband(ラッソバンド)という製品名で布基材の片面粘着テープを販売していました。研究施設などで使用する容器を密封するために使われていたそうです。大量生産された初めての布テープが、このラッソバンドだったと言われています。

Lassobandの商品パッケージ(1906年)

多目的に使えるラッソバンドの発売以降、素材に布以外をつかった製品が開発され、粘着テープの色や大きさも変化していきました。製造業をはじめビジネスの現場から一般家庭へと普及し、今では様々な種類の粘着テープが世の中に浸透しています。

これら粘着テープの基礎となったラッソバンドは、tesa® 4651という品名で現在も販売されています。実は、海鳥を研究する分野でこの製品が重宝されています。ペンギンなどの羽根に発信機を取りつけるために使用するそうです。極寒の海や吹雪など、雪解けまでの長期間を耐えぬく高い耐久性が求められます。tesa® 4651は、100年以上前からの知識や経験が集約されたテサの傑作です。

工業用で初の粘着テープ:Citoスポーツ絆創膏

失敗作からヒット商品へ

バイヤスドルフ氏が医療用の絆創膏の開発に失敗したことがきっかけで、一般的な粘着テープが誕生しました。1890年代、絆創膏の試作品が皮膚に強くつきすぎ、炎症を起こしてしまったのです。自転車のパンク修理に活用することを思いついたトロプロヴィッツ博士は、「スポーツ絆創膏」という製品名で販売するように助言しました。

当時は悪路でタイヤのパンクが日常茶飯事だったこともあり、画期的な商品として話題のヒット商品になりました。このときの片面粘着テープが、医療用以外で初めての粘着テープです。失敗しても諦めない姿勢や、発想の転換をおこなうマインドは、いまのテサにも受け継がれています。