インクテスト

インクはなぜ指に勝るのか?

粘着テープの性能に関わる特性

接着剤や粘着テープはなぜ貼り付くのか? 初期タック(初期粘着力)を測定方法は? フィンガーテスト、インクテスト、表面エネルギーとは?

指を使って粘着テープを検査する場合、テープが指に貼り付いたら、初期タックが高いと思われるかもしれません。 しかし初期タックは、被着体によって変化します。 表面エネルギーは接着メカニズムと密接に関わっています。 皆さんの指にとってこれは何を意味するのでしょう? 答えはこちら。

接着剤、粘着テープが機能する仕組みは?

求められる接着力は用途によって異なります。 マスキングテープのように簡単にはがせて、のり残りしないテープでは、粘着力が高すぎてはいけません。 逆に、自動車のリア部分にロゴを貼り付ける時のように、高い耐久性が求められる場合は、どのような条件下でもはがれない強力な粘着力が必要になります。 接着特性は、粘着テープごとに細かく指定されています。 多くの要因が接着特性に影響します。 代表的なものは粘着剤基材、負荷重量などです。

粘着テープの接着強度は、さまざまな要素に影響されます。たとえば、 環境条件(温度など)、貼り付け条件(貼り付ける圧力など)、加熱時間と引きはがしスピード、被着体の表面状態などです。特に、 表面の極性と表面状態(粗さ/滑らかさ)は、粘着特性を大きく左右します。

自動車産業におけるテープの使用
粘着テープを使ってトリム、プロファイル、エンブレムを自動車に固定
布と自動車塗装の上の水: 表面エネルギー次第で、水は水滴を形成したり、単に流れ落ちたりします。
布と自動車塗装の上の水: 表面エネルギー次第で、水は水滴を形成したり、単に流れ落ちたりします。

表面エネルギー: 張力で接着

粘着テープの貼り付きやすさは、表面エネルギーに大きく依存します。 理想的な接着は全ての条件が整った場合にのみ可能です。

例えば、自動車のテールゲートを想像してください。 車の状態は、洗車を終え、ワックスで磨いたばかりです。 そこに雨が降り、車を濡らします。 しかし、水滴はすぐに流れ落ちていきます。 水滴は原形を保ち、分散するようなことはありません。

その理由は、水滴の表面エネルギーがワックスのかかった車の塗装面の表面エネルギーよりも高いからです(テフロンのフライパンでも水滴の挙動は同様です)。 液体には基本的に、形状を保ち、 表面積を可能な限り小さく抑えようとする性質があります。 最終的には、表面張力の働きによって球形となります。

液体分子間の凝集力(内部引力)は「表面張力」と呼ばれる現象を生み出します。 例えば、コップに満たした水の表面分子は、全面が他の水分子を含んでいるわけではありません。 そのため、この分子は水の内部方向に引きつけられ、隣接する水分子および下方向に位置する水分子と強い力で結合します。 この引力は水分子の上方にある空気分子の引力よりも大きくなります。 その結果、この内部引力が水と空気を分離する表面を形成します。
液体分子間の凝集力(内部引力)は「表面張力」と呼ばれる現象を生み出します。 例えば、コップに満たした水の表面分子は、全面が他の水分子を含んでいるわけではありません。 そのため、この分子は水の内部方向に引きつけられ、隣接する水分子および下方向に位置する水分子と強い力で結合します。 この引力は水分子の上方にある空気分子の引力よりも大きくなります。 その結果、この内部引力が水と空気を分離する表面を形成します。

しかし、その球形にも力が掛かります。 重力は水滴と自動車の塗装面を引き寄せます。 水滴にかかる引力が強いほど、変形は激しくなります。 高エネルギー表面との強い相互作用にさらされると、水滴は分散します。

これは、粘着テープの粘着剤と被着面の関係にも当てはまります。 被着体の表面エネルギーに高低によって、粘着剤は分散しやすかったり、しにくかったりします。 しっかりと接着することがあれば、またそうでないこともあります。 低表面エネルギー(プラスチックなど)基材の粘着テープにプライマーが使用されるのは、このためです。 プライマーを使うことで、基材の表面エネルギーが高まり、粘着剤との結びつきを強化します。

指、それともインク?
粘着テープの即効性を検査したい場合、指でテープに触れてみることも一つの方法です。 しかし、指に発揮される即効性は、実際の被着面に発揮される即効性とはまったく関係がありません。 指とその他の物体の表面エネルギーがまったく異なるからです(粘着テープを指に貼り付けたい場合は、この測定方法で問題ありません。 テストはバンドエイドでも行えます)。

それでは、インクはなぜ指に勝るのでしょうか? 理由は簡単です。 インクは、液状で、粘着剤と似た挙動を示すからです。 インクが表面に均等に分散すれば、表面エネルギーは高いと言うことができますので、こういう反応の被着体には粘着剤が表面に貼り付き易いと判断できるからです。 この仕組みの詳細については、インクテストに関する記事をご覧ください

アルミ上のインクテスト
アルミ上のインクテスト