クラッチやギアボックスも、排気管や燃料タンクもありません。電気自動車は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載した車両よりもはるかに少ない技術的コンポーネントで走行します。電気自動車の「タンク」は、電気モーターに作動に必要なエネルギーを供給する高電圧バッテリーです。バッテリーは車両内で最大のコンポーネントであることが多く、車体の下部、キャビンの下に搭載されています。しかし、バッテリーは単一の要素ではなく、何百個もの部品とバッテリーセルで構成されます。この複雑なシステムを安全かつ大量に製造できるようにする上で、メーカーは完全な自動化に依拠しており(インダストリー4.0)、そこでは粘着テープも使用されています。高品質なテープは、製造工程において迅速な取り扱いが可能で、信頼性の高い粘着・接着特性を備えているため、非常に大きな利点を提供します。

電気自動車向け特殊粘着テープ
マーケット・業界
一つのテクノロジーが急速に進歩しています。2030年には初めて、世界の電気自動車の販売台数が内燃エンジン車の販売台数を上回る見込みです。メーカーとサプライヤーは、より強力なバッテリーとその安全な組み立てに絶え間なく取り組んでいます。粘着テープはこの分野で大きな可能性を秘めています。テサは多機能テープの開発を専門としており、自動車業界のパートナーとして、eモビリティに向けた変革に重要な貢献をしています。
グローバルな構造を持つグローバルなトピック
世界有数の粘着テープサプライヤーの一社であるテサは、2016年からeモビリティの分野で事業を展開しています。これは大きな成長の機会がある分野です。「eモビリティへの移行は世界的な課題です。そのため、当社のチームもグローバルに活動しています。当社の製品・技術開発、生産、カスタマーサービスの世界的なネットワークにより、革新的なソリューションでメーカーとサプライヤーをサポートし、このダイナミックな市場における事業の成功を後押ししています」と、中国・ドイツのプロジェクトハウス「eパワートレイン」の責任者であるニルス・ウテシュ博士は説明します。「eパワートレイン」は、e-モビリティに関連するすべての業務を統括しています。


「この市場は極めて複雑かつダイナミックで、まだ誰もが手探りの状態です。これは非常に多くの技術的課題と同時に、素晴らしいビジネスチャンスをもたらします。当社は、お客様がこの変革プロセスに参加できるよう支援します。」
国際製品マネージャー、自動車事業部
中核事業と将来の分野
テサの中核事業に相当する2つの主要な適用分野は、バッテリーセルの永久接着と電子部品の絶縁です。有名なバッテリーメーカー向けの最近のプロジェクトは、お客様が当社の迅速で効率的なサービスに依拠できることを示しています。韓国、ハンガリー、中国、ドイツのテサ従業員間の国際的な協力により、粘着テープをお客様の新たな固有の要件に素早く適応させ、生産開始を可能にすることができました。この例はまた、eモビリティに関してイノベーションのペースがいかに速いかを示しています。短中期的に、業界ではバッテリーの冷却を改善するテープが求められます。


テサにとっての利点として、新しいソリューションを開発する際、専門家チームは実証済みの製品に依拠することができます。eモビリティ担当研究マネージャーのアイリン・メス博士は次のように説明しています。「当社はすでにスマートフォン用の熱伝導性テープを供給しています。しかし、電気自動車に使用する粘着テープは、隙間や凹凸を埋め合わせる目的などのために厚みがあり、熱抵抗も大きくなります。そのため、粘着テープの特性を改善する必要があります。たとえば、熱伝導性粒子を充填するといった手段を取ります。当社の押出成形技術は、他に類例のないもので、この目的に最適です。最初のプロトタイプはすでに研究所でテストに成功しています。現在、工業規模の生産が開始されています。」
トップトレンド:耐火テープ
熱伝播からの保護は、現在、電気自動車に関するあらゆる課題の中で最大のイノベーションの原動力と考えられています。目標は、電気自動車で事故が発生した場合にバッテリーシステムを火災から保護することです。事故時にはセルに欠陥が生じて高温となり、これが近隣のセルへ連鎖的に広がる可能性があります。温度が80℃を超えると、火災のリスクが高まります。この課題に対処するために、テサはメーカーが適切なセキュリティソリューションを開発できるよう支援しています。研究マネージャーのケビン・ヤンは次のように述べています。「バッテリーパックの耐火ライニング用の粘着テープと、断熱によって熱暴走を完全に防止するソリューションの開発に取り組んでいます。これには、バッテリーセル間に耐火粘着テープが必要です。」
もう一つの重要なトレンドは、いわゆるセル・トゥ・パック設計によるバッテリー構造の簡素化です。構造的な観点から、この分野ではこれまで以上に熱伝導性の高い接着も求められます。実用上の利点としては、従来、バッテリーセルはモジュールにまとめられ、その後、バッテリーパックに組み込まれていましたが、将来的には、メインバッテリーに属する要素をフレームに直接固定できるようになります。「これにより、多くの接着工程が不要になり、機械的なひずみも軽減されます」と、アイリン・メスは言います。
業界の専門家は、特にeモビリティの分野で、粘着テープが万能の手段として問題なく役立つと前向きに捉えています。今後、業界の要件はさらに高度化し、開発サイクルは一段と短縮されます。これはテサにとって経験上、利用しやすい機会です。
「バッテリーパックの耐火ライニング用の粘着テープと、断熱によって熱暴走を完全に防止するソリューションの開発に取り組んでいます。これには、バッテリーセル間に耐火粘着テープが必要です。」
シニア研究開発マネージャー

eモビリティ
電気自動車はまだ路上の走行車両の中で多数を占めているわけではありませんが、内燃エンジン車と比べて着実に地歩を拡大しています。2019年には、世界中で約790万台の電気自動車が登録され、2018年より約230万台増加しました。予測によると、40%の増加に続き、2020年にはさらに250万台の電気自動車が新たに販売される可能性があります。成長は特に欧州で堅調です。欧州大陸はeモビリティの新たな「ホットスポット」へと発展しており、首位の市場である中国との格差は縮小しています。米国メーカーであるテスラのドイツへの投資やアジアのバッテリーメーカーであるLG化学のポーランドへの投資などは、欧州大陸がいかに重要になっているかを示しています。
バッテリーシステムの組み立て、絶縁、安全性に関しては、粘着テープが重要な役割を果たします。テサグループは、様々な製品とソリューションで電気自動車業界をサポートしています。たとえば、バッテリーパックには、ワイヤーハーネス、バッテリーセルの接着、放熱、耐火対策、シーリングなどに、いくつかの高機能粘着テープが使用されています。テープの厚さは、5~4,000µm(0.005~4mm)の範囲で様々です。

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