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ラジオからスマホ、そしてその先へ。派生と進化を続ける粘着テープ

音楽が様々なジャンルへと枝分かれして発展していくように、くらしに身近な電化製品や粘着テープも様々な特性をもつ種類へ派生しながら進化を続けています。

工業用粘着テープの誕生から125年経ちますが、70年前は家庭用に普及していたラジオの音質を改善する製品がヨーロッパで人気を博しました。現代では世界中で2億台のスマートフォンが現役で使われています。スマホの内部には、様々な役割をもった粘着テープが部品として採用されています。

工業用粘着テープ生誕125周年

スマートフォンが世に登場した当時、バッテリーを安全に取りはずして部品を回収・リサイクルすることは不可能だと思われていました。しかし現在はこの不可能を可能にした、簡単にはがせる粘着テープの技術が採用されています。最新デバイスとともに粘着テープが進化した歴史のはじまりは、1950年代にまで遡ります。当時、多くの家庭で楽しまれていたラジオの振動音を抑える役割を果たすために開発されたtesamoll®(テサモール)という製品がきっかけです。

このころのラジオは振動によって不快な音が発生していましたが、これを防ぐことができる画期的な商品だと注目が集まりました。一般家庭の窓やドアのすき間を防ぐ用途として趣を変えていますが、現在もヨーロッパで販売しているロングヒット商品です。当時は情報を得る手段として身近な存在だったラジオの役割は、スマートフォンなどの最新デバイスへと移り変わってしまいました。急速にハイテク化するニーズにあわせ、粘着テープもどんどん姿かたちを変えています。

例えば、最新のスマートフォン端末は常に多くの刺激にさらされています。落下による衝撃や、部品の発熱、外気温の急激な変化など、過酷な環境にも耐えうる性能が求められています。さらに、どれほど小さい部品であっても正確に部品を配置する緻密さも必要になっています。最新のスマートフォン端末の1台には、のべ70種類ほどのテサ製品(粘着テープ)が組み込まれています。

薄さや軽さ、扱いやすさなどの面から、他の接着技術より利点が多いため粘着テープが採用されています。スマートデバイス向けの製品は0.003~0.5mmなど、半導体ウェハーのような薄さです。ヒトの髪の毛と比較しても、さらに薄い構造です。OCAというディスプレイの構造に使用される特殊な高透明の製品や、遮光や衝撃吸収など接着すること以外の機能や性能を兼ね備えた粘着テープがスマートデバイスの部品として活躍しています。

なかでも、特許技術の構造をもつtesa® Bond & Detach(テサ ボンド&ディタッチ)はバッテリー交換作業の簡略化を実現しました。ネットサーフィンやSNS、動画・音楽再生アプリなどを酷使して劣化したバッテリーを交換することで、端末の寿命を延ばすことができます。サステナビリティに関する取り組みとしても、1台のデバイスを修理して長く使うためになくてはならない製品です。粘着剤のあとを残さず簡単にはがせるため、回収された端末や部品のリサイクル実現にも貢献しています。

デバイスメーカー様との協力体制

テサグループ全体で500名以上の研究員が新しい製品や技術の開発に携わっています。このうち、75名は急速に進化するエレクトロニクス業界を専任しています。中国・蘇州にある研究施設では、スマートデバイス関連だけでも1年間に数千回の試験が実施されています。パートナーシップを結んでいる企業様と共同で用途開発や試験をおこなっているカスタマー・ソリューション・センターでは、実際の環境に近い条件でのテスト等を実施しています。その後、テスト端末は「拷問部屋」という名の耐久試験場へと送られ100以上の試験プロセスによる厳しい検査が実施されます。

tesamoll®の広告

ラジオの進化と粘着テープ

1950年代のラジオが設計されたころは、ノイズや振動を抑える技術がまだ発達していませんでした。複雑な工程が求められるため、実現は遠い未来のことだと考えられていました。このような背景が後押ししたこともあり、当時テサが発売したtesamoll®(テサモール)は画期的な商品として市場に受け入れられました。電化製品の表面に貼りつけることで、デリケートな部品の保護と同時にノイズの原因となる振動を防ぐクッションのような役割も果たします。おかげで、ラジオの振動音が混ざることもなく音楽を楽しめるようになりました。このtesamoll®は、改良版の商品が今でも現役で活躍しています。窓やドアのすき間用テープとして、ヨーロッパ各地で愛されているロングヒット商品です。

この商品以降も、最新家電やスマートデバイスなどの進化に合わせて進化した粘着テープがたくさん誕生しました。一般のユーザーからは見えないところで今も進化を続けています。音楽に新しいジャンルがうまれるように、粘着テープも薄さや透明性、せん断強さ、弾力など、様々な特徴をもつ粘着テープへ派生していきました。1950年代は、オフィス家電が導入され始めた時期とも重なります。ロック音楽や機械化が世界中を席巻していた時代から、テサの粘着テープも一緒に進化の歩みを続けています。

工業用で初の粘着テープ:Citoスポーツ絆創膏

失敗作からヒット商品へ

バイヤスドルフ氏が医療用の絆創膏の開発に失敗したことがきっかけで、一般的な粘着テープが誕生しました。1890年代、絆創膏の試作品が皮膚に強くつきすぎ、炎症を起こしてしまったのです。自転車のパンク修理に活用することを思いついたトロプロヴィッツ博士は、「スポーツ絆創膏」という製品名で販売するように助言しました。

当時は悪路でタイヤのパンクが日常茶飯事だったこともあり、画期的な商品として話題のヒット商品になりました。このときの片面粘着テープが、医療用以外で初めての粘着テープです。失敗しても諦めない姿勢や、発想の転換をおこなうマインドは、いまのテサにも受け継がれています。