店頭に並ぶ商品は消費者に対して自分の魅力を振りまき、「自分たちの間には特別なつながりがある」と口説いているようなものです。この「つながり」とは、商品のパッケージを指します。パッケージが商品を守る役割を担うことはもちろん、商品の積み重ねを可能にするなど、輸送しやすくするメリットがあります。しかし、現在のパッケージにはマーケティングのツールや環境への配慮をPRするなど、様々な役割が与えられています。パッケージ自体が製品の一部となりつつあるのです。独創的で、革新的、さらに個性的なパッケージへと変化してきています。特に、消費者とつながるインタラクティブなパッケージが多くみられます。現在のパッケージングのトレンドは3つのSがキーワードになっています。Secure(安全性の担保)・Smart Packaging(スマートパッケージ)・Sustainability(サステナビリティ)です。

これからのパッケージに欠かせない3つの「S」
サステナビリティ
これからのパッケージに必要な要素とは?パッケージはどのような進化を遂げるのでしょうか?3つのトレンドをご紹介します。
①Secure:安全性を担保するパッケージ
一般消費者向けの事業において、企業と消費者のどちらにとっても製品の安全性が重要な課題として認識されています。食品の安全性やリピーターの囲い込み、模倣品防止などの観点から、商品にマーキングし追跡する技術が発達しています。サプライチェーン内のトレーサビリティや透明性を確保しています。世界的に模倣(偽造)品が多く出回るようになったことで、薬品や食品などの分野以外でも安全性の担保と追跡ができるシステムがより重要視されるようになりました。

tesa scribos®(テサ・スクリボス)はこの分野のソリューションプロバイダとして、商品とデジタルをつなぐ最先端の技術を提供しています。特殊なシーリングソリューションにより、パッケージにマーキングを施すため一度でも開封すると見た目ですぐ分かるようになります。これにより、荷抜きや運搬中の意図していない補充などの犯罪を防ぎます。製品のひとつひとつをオンラインモジュールでつなぐことで、製造拠点から流通経路、顧客の手元に届くまでを追跡することが可能です。顧客に提供する商品の品質を守るだけではなく、他社への流出を防ぐ役割も担います。
②Smart Packaging:機能性に優れたスマートパッケージ
実際の商品とデジタル技術を組み合わせることで、新たな世界が開きます。拡張現実(AR)やQRコードなど、様々なデジタルツールが最新のパッケージに採用されています。これらの「スマートパッケージ」によって商品がトップセラーになる事例もみられます。パッケージをメーカーと消費者をつなぐエキサイティングなツールになるのが、スマートパッケージです。大人向けのお酒から子供向けのおもちゃまで、様々なカテゴリの商品で「インタラクティブな」パッケージが採用されています。

例えば、日本企業でも採用が進むRFIDを例にとってみましょう。RFIDタグにより、商品が消費者の手元に届くまでの追跡が可能です。逆に、消費者が製造拠点や流通経路をゲーム感覚で調べたり、メーカーと交流したりすることもできるようになります。レコード盤に刻んだ音楽をMP3プレイヤーで再生するような、アナログとデジタルを融合した技術といえます。現在の技術では特殊な素材が不可欠ですが、将来的には紙などの一般的な梱包材とデジタル技術を融合できるような技術が発展すると考えられます。


ゲーミフィケーションとは?
ゲーミフィケーションとは、マーケティングの手法の一種です。ゲームと関連のない商品やサービスにゲーム性をもたせることを指します。顧客ロイヤルティを高めることを目的として、これまで広告やエンターテイメントの分野で多く採用されていました。近年は、フィットネスやヘルスケア、エコ活動や教育の場面でも「ゲーム化」が進んでいます。ユーザのモチベーションを高め、継続させることがゲーミフィケーションの目的です。一見ゲームに関係のない分野でも、ユーザの興味を刺激しゲームに参加させることで自然とアクティビティを遂行させたり達成させたりすることができます。
③Sustainability:サステナビリティの取り組み
消費者や政治家からも梱包材へサステナビリティを求める声が挙がっており、梱包の業界でも重要視する傾向があります。紙素材などリサイクル可能な梱包材をベースとしていても、商品の中身が見えるプラスチック製の小窓やプラスチック素材の梱包テープなどが少し含まれるだけで、梱包材のリサイクルを阻害しゴミとなってしまう難しさが潜んでいます。そのため、私たちはより環境にやさしい素材の梱包テープを提案しています。これにより、段ボールや厚紙などの梱包材にテープがついたままでもリサイクルが可能になります。また、粘着テープの製造工程で環境への負荷が大きい溶剤を使用しない無溶剤の技術を採用したり、サステナブルでエコな原材料を使用することでも環境への負荷を低減することができます。消費者の目に見えないところで、私たちテサグループはサステナビリティに対して全力で取り組んでいます。
プラスチックから紙素材の梱包材へ戻るトレンドは、世界的にみられます。このため、紙素材のリサイクルを阻害しにくい梱包用テープ製品(tesa® 4313)を新たに開発しました。中サイズの段ボールなどの梱包に最適な製品です。FSC認証済みのサステナブルな紙を基材に採用しています。テサグループはサステナブルな素材を採用した粘着テープ製品の展開と、サステナブルな製造工程を採用するという2つの側面からパッケージ業界の持続可能性を支援しています。

年間7800万トン
世界中で使われているプラスチック由来の梱包材
(出典: WWF)
環境負荷が大きいとされる溶剤を一切使用しない「無溶剤」の工程で製造した製品を多く展開しています。これからも、環境にやさしい製造工程の技術開発を進めていきます。パッケージ業界のサステナビリティを大きく進めることができると確信しています。
一般産業部門 グループプロダクトマネージャー

法律とエコなパッケージ
2019年1月1日、ドイツのパッケージ法(正式名称:Gesetz über das Inverkehrbringen, die Rücknahme und die hochwertige Verwertung von Verpackungen)が施行されました。梱包材のリサイクルと買い戻しに関する法律です。パッケージのサプライヤーに対しては資源の有効活用を、廃棄する一般の人々に対しては簡単にリサイクルできるパッケージを推奨するように働きかけています。リサイクル可能なパッケージに対してインセンティブ(金銭的な報酬)を提供する取り組みなどを通じ、梱包材によるゴミを削減し環境への負荷を低減させることを目的としてこの法律が制定されました。このようなトレンドは世界的にも定着しつつあり、多くの国で様々な取り組みへとつながっています。